ロダンの有名な彫刻「考える人」。頬杖をつき、静かに座っているように見えるが、盛り上がった筋肉から全身に力が入っていることがわかる。実はこの姿勢こそが、排便時の理想のスタイルであることが、日本人研究者らによって明らかになった。
論文のタイトルは「排便に体位が与える影響:『考える人』の姿勢に関する前向き研究」。2016年2月、イタリアの医学誌に発表された。研究を行ったのは、熊本市にある大腸肛門の疾患を専門とする高野病院の医師、高野正太氏率いるチームだ。医療現場では以前から、排便するときは「考える人」の姿勢がよいとされてきたが、実証されたのは今回が初めて。
研究チームは、高野氏が在籍していた米クリーブランドクリニック・フロリダで、2013年1月から半年間、便秘など排便の困難を訴えて受診した男女約50人を対象に研究を実施した。体位が排便に与える影響を調べるため、肛門からペースト状のバリウムを少量入れて、排便するときの状況を調べる「シネデフェコグラフィー(排便造影検査)」を用いた。バリウムを疑似の便に見立てて、それを排泄するときの状況を撮影し、画像を分析する手法だ。
被験者のうち、背筋を伸ばした状態でバリウムを排出できなかった22人に「考える人」の姿勢(片方のひじをひざにつけるポーズ)を取らせたところ、11人が完全に排出することができたという。