一目ぼれのナゾを探る(上) 脳は人の魅力を0.1秒で判断する

一目ぼれのナゾを探る(上) 脳は人の魅力を0.1秒で判断する 魅力のナゾを科学する

   人ごみの中、偶然目が合って一目ぼれ! 合コンで顔を見た瞬間、「この人だ!」と思った。――まるで、ドラマのような運命の出合いのシーンは本当にあるのでしょうか。一目ぼれのナゾを2回に分けて解説します。

恋愛経験が豊富な人ほど一目ぼれしやすい?

   いくつかの統計を比較してみると、男女差はありますが概ね60%くらいの人は一目ぼれを経験したことがあるようです。

   法政大学教授で心理学が専門の越智啓太さんによると、一目ぼれには「外見的一目ぼれ」と「内面的一目ぼれ」の2種類があって[1]、前者は相手の外見に惹かれて恋心を抱いてしまうことを指すのに対して、後者は相手の人となりや行動に触れたときに恋に落ちることを指しています。越智さんの著書『恋愛の科学』には、『ひとめぼれ傾向尺度』が掲載されているので、あなたの恋の傾向を測ってみてはいかがでしょうか。

   ただ、いずれの傾向であっても、恋愛経験が豊富な人ほど、一目ぼれをしやすく、恋愛中であっても他の人を好きになる可能性を持っているようです。

魅力が分かるのは0.1秒で十分

   「相手が恋愛対象として適切であるかどうかを把握するに0.1秒あればいい」。最近の心理学の研究では、このような人の直感的で瞬間的な能力が明らかにされつつあります。

   例えば、プリンストン大学のウィリスとトドロフの研究では顔写真を0.1秒見ただけで、相手がどのような人物であるか十分に把握することはできなくても、人の魅力や好感度、信頼性などを評価してしまうということが示されています[2]。

   魅力的だと思ったものは長く見てしまう傾向があることも知られています。一瞬で魅了されて、ぼーっと見続けてしまう「一目ぼれ」的なシーンはドラマの中だけの話ではなさそうです。

視線と脳活動の関係は

   一目見て魅力的だと判断すると、数秒間にわたって相手の目を見つめ、その視線を通して自分の愛情を伝える行動をとります。ですから「視線を合わせる」というのは魅力を伝えるという意味では重要です。

   15年以上前の研究ですが、ロンドン大学のカンペらが行った脳研究では、顔の向きではなく視線の向きが顔の魅力の感じ方に重要で、顔が正面を見ていなくても視線が相手を見つめていれば魅力的に感じられ、脳の奥深く中心部にある腹側線条体という場所(報酬や喜びに関係する)の活動が変化するという結果が得られています。[3]

   ただし、視線を感じたからといってすべてが好意を寄せるものとは限りません。長く見つめられる理由には魅力のほかにも条件や情報収集といった要素が多く含まれるからです。


(後編につづく)


[執筆:川畑秀明 慶應義塾大学文学部心理学准教授]

かわばた・ひであき/専門は感性⼼理学、認知神経科学。主観性と経験価値の⼼理とその脳メカニズムを研究し、主に、芸術、美、魅⼒、ユーザー・エクスペリエンス、デザイン、ユーザビリティ、感性教育、鑑賞⾏動の解明に努める。ヒトの主観はあいまいで非常に影響を受けやすいため、その影響の関係や因果性に関する⼼と脳の働きを明らかにし、応⽤研究に活かす。著書に『脳は美をどう感じるか―アートの脳科学』(ちくま新書)がある。

医師・専門家が監修「Aging Style」

参考文献
[1]越智啓太 (2015). 『恋愛の科学ー出会いと別れをめぐる心理学』実務教育出版
[2]Willis, J., & Todorov, A. (2006). First impressions making up your mind after a 100-ms exposure to a face. Psychological science, 17, 592-598.
[3]Kampe, K.K., Frith, C. D., Dolan, R. J., Frith, U. (2001). Reward value of attractiveness and gaze. Nature, 413, 589.

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