12月6日に開催された「日本抗加齢協会主催の第2回学術フォーラム」の中で「腸活戦略! 2017」と題したシンポジウムが行われた。座長は東京医科大学茨城医療センター消化器内科の松崎靖司教授と熊本大学大学院生命科学研究部・医学系総合医薬科学部門 代謝・循環医学講座分子遺伝学分野の尾池雄一教授。
最初に登壇したは京都府立医科大学消化器内科学の内藤裕二准教授。内藤准教授はそもそも「腸活」という言葉に明確な定義がないとして、腸内細菌が腸管だけを活性化させるわけではなく遠隔臓器にも影響を与えていることがわかっており、腸内フローラの機能解明にはその複雑さゆえまだまだ時間がかかるとの見解を示した。また腸活で重要ななことは"悪影響を与える曝露因子を除外すること"であり、例えば日本人と中国人は遺伝子的には非常に似ているが、腸内フローラのパターンは全く違っているという民族性によっても腸内環境を良くするアプローチは変わってくるとした。
また、近年日本人では男性の1/3、女性の1/5が軟便傾向にあり、今後日本人に関しては高齢者の便秘と若年の軟便の双方に対策が必要になってくるとし、日本人の男性と女性は違う腸内フローラを持っている可能性があるとし、さらに日本人に限って言えばBMIと腸内細菌との相関関係はなく、ビフィズス菌が多いことが特徴で、今後の腸内フローラ研究においては民族差、性差、世代差を考えることが必要であると述べた。
また、免疫チェックポイント阻害剤に関しても腸内フローラによって効果が劇的に出たりでなかったりすることもわかってきており、腸内環境の特定による薬物治療が必要になってくる時代であるとし、さらに現代人の食物繊維摂取不足に警鐘を鳴らすとともに、前日の食物繊維の摂取で翌日の便の状態が変わるほど腸内環境に対する食物繊維の影響は大きいと述べた。また、トリメチルアミンやメタン、硫化水素などの有機化合物の摂取による腸内環境の悪化、さらに内免疫層の破壊とそこに侵入する細菌の問題など新しい腸内環境に関する問題点も指摘し、腸内環境研究はさらに進めていく必要性を述べた。
続いて、「外食業界における健康への取り組み -食物繊維を意識したメニュー開発-」と題して 吉野家ホールディングス執行役員でグループ商品本部素材開発部辻智子部長が講演。現在の日本の外食率は35%、外部化率は45.1%で、半分は外食+中食となっている現状で、外食の健康に寄与するメニューの提案が非常に重要になってきたとして、特に吉野家では水溶性食物繊維オートミールや押麦に注目、「麦とろ牛サラ御膳」というメニューには食物繊維5.4g(水溶性2.0、不溶性3.1)βグルカンが1.6~1.9g含有されており、シールド乳酸菌を加えた豚汁、けんちん汁には食物繊維2.0gが含まれているとして、吉野家の健康志向メニューを紹介した。
さらに、食後の血糖値の上昇を穏やかにするという機能で外食産業として初めて機能性表示食品の届け出を行った「サラシアエキス入り牛丼」に関しては、サラシアが腸内細菌叢を改善する研究も発表されており、さらなる機能性表示にも意欲を示した。
[斬新な視点から健康・食・運動スポーツに関する情報を発信するWebマガジン「HealthBrain」2017年12月7日より転載]