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12月18日:年をとると記憶力が低下する理由(1月3日発行予定Neuron 掲載論文)

   睡眠は動物の生存にとって最大の危険な時間なのに、ほとんどの動物が必ず睡眠を必要とする。このことは、睡眠には一定の危険を受け入れても必要な理由があることを示しており、これを求める研究が続けられている。2013年には睡眠により脳脊髄液の循環経路が拡大し、老廃物の除去が促進されるという「驚くほど単純な」アイデアが示されたが(http://aasj.jp/news/watch/608)、このような考えは例外で、一般的には「睡眠には覚醒時の記憶を固定する」機能があるから睡眠は必要だと考えられている。

   今日紹介するカリフォルニア大学バークレー校からの論文は、「老化により記憶力が落ちる」現象を通して、記憶の固定に関わる睡眠の役割を明らかにしようとした研究で1月3日発行予定のNeuronに掲載された。タイトルは「Old brains come uncoupled in sleep: slow wave-spindle synchrony, brain atrophy and forgetting(高齢の脳は睡眠中連携を失う:徐波と紡錘波の同調、脳の萎縮、そして忘却)」だ。

   覚醒中に脳の複数の箇所に分散して一時的にしまい込んだ短期記憶を、もう一度呼び起こして長期記憶へと固定することが睡眠の重要な役割であることは、記憶に関わる海馬のシナプスが一晩で消えたり大きくなったりするという観察により裏付けられている。また、睡眠中の脳波を記録する研究から、脳波構成成分の同期が記憶固定過程を反映していると考えられている。

   では脳波の同期とは何を指すのか?

   頭全体に電極を置いて脳波を記録すると、周期が1.25ヘルツ以下の徐波、12-16ヘルツの紡錘波、そして主に海馬が発信源の80-100ヘルツのリップル波から構成されている。記憶の固定化にもっとも重要と考えられているのが、徐波が上昇する時、紡錘波が徐波に乗る形でロックされる同期で、老化によりこの同期が乱れることから、年齢による記憶力の衰えの背景にこの同期異常があると考えられている。

   この研究では特に目新しい発見を目指したわけではなく、この徐波と紡錘波の同期(SOSC)が本当に記憶固定と相関しているのかについて、詳しい脳波の分析と記憶テストを組み合わせることで明らかにしようとしている。この時、記憶力の低下している対象として70歳前後の高齢者を選び、若者との差がSOSCにあることを示せば、SOSCが記憶の固定に必須であることが証明できるとする、一種の3段論法的研究と言える。

結果をまとめると以下のようになる。

1)睡眠前に記憶したことを睡眠後に残っているか調べると、高齢者は低下している。
2)若者の睡眠中の脳波の振幅の強度と比べると老人は徐波から紡錘波の波長レンジで低下している。
3)老人では特に前頭部から中心部の電極でSOSCが低下している。
4)脳波を詳しく分析すると、まず皮質の徐波が紡錘波を出す領域に働きかけて、同期を誘導している。この同期誘導のタイミングが老人ではずれる。
5)このズレと記憶テストの結果が相関する。
6)MRI検査で調べた脳の構造変化と、同期のズレの相関を調べると、前頭前皮質内側部の灰白質の低下と強く相関する。
要するに、連合に関わる前頭前皮質の神経細胞数が老化とともに低下すると、徐波と紡錘波を同期させる馬力がなくなり、同期のタイミングがずれる結果、記憶の固定がうまくいかないという結論になる。

   これまで考えられてきたことを、より明確にした研究だが、70に近付こうとしている身にとっては、寝ている時に、もう少し強度を上げる機械でも開発されればいいなというのが一番の感想だった。

[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ 2017年12月18日より転載]

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