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スマートフォンに血圧測定機能を持たせる(3月7日Science Translational Medicine 掲載論文)

   全世界のスマートフォンユーザーがなんと30億人を超えたと聞く。もちろん便利だからこれだけの人が使うのだが、コンパクトなモニターと様々なセンサーを内蔵していることで、その用途は拡大し続けている。

   特に、健康管理分野はライフログのアプリを始め、各社最も力を入れている分野だ。ところが、健康管理の入り口と言える血圧測定はスマートフォンでは実現していなかったようだ。今日紹介するミシガン州立大学からの論文はスマートフォンに正確な血圧測定装置を実装することが可能であることを示した論文でScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Smartphone-based blood pressure monitoring via the oscillometric finger pressing method(指を押し付けて血流振動を計測することでスマートフォンを用いて血圧をモニターする)だ。

   血圧がスマートフォンで測定できていないと聞いて驚く方も多いだろう。私も最初この論文がどうしてScience Translational Medicineのようなトップジャーナルに掲載されたのか驚いた。実際、この研究で開発された装置では、光プレスチモグラフ(PPG)と呼ばれる方法を用いた脈波センサーと圧力センサーを組み合わせて血圧を測定しているが、例えばサムソンギャラクシーではそれぞれを実装した機器が発売され、例えば心拍数測定に利用されている。またPPGを使った血圧モニター存在するようだ。特に新しいデバイスが開発されたわけではない。

   しかし血圧測定では収縮期圧と拡張期圧の両方を測定する必要があるが、これまでPPGを使った血圧測定と称するものは、収縮期圧と相関するだけの便宜的なものだった。血圧が健康管理の最初の入り口だとすると、30億人のユーザーの血圧を瞬時に測れるならトップジャーナルの興味を引くのは当然だと納得した。

   この研究では、PPGセンサーの上に圧力センサーを重ね、指の第一関節を押し付けた後、圧力を加えながら動脈を流れる血液量の変化を測ることで血圧を測っている。要するに、これまで別々に実装されていた二つのセンサーを組み合わせれば血圧も測れるというアイデアだ。一般の血圧計で、カフを膨らませて圧力をかける操作そ、圧力センサーに自分で指を徐々に強く押し付けるという操作に代え、拍動音を聴診器で聞く代わりに、PPGセンサーで動脈の血液量の振動を測ることで代えている。

   この研究ではスマフォに装着できる薄い測定装置を製作し、それをスマフォに内蔵されたものと見立てて、通常の方法で測った血圧と比べながら実用性を検証している。結果として、現在病院で利用されている指で測る測定器と同等の性能を持っている事を示している。

   もちろん、更に改良は必要だが、簡単で、今のスマートフォンメーカーなら、明日からでも薄い装置の中に実装できるシステムである点がこの論文の売りだろう。ある日、日本全国で同時にスマフォユーザーの血圧を測定して集められる日が現実になりつつあると思うと、これは革命だと思う。

[NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ) 論文ウォッチ 2018年3月11日より転載]

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