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食から病を予防。医師と栄養士をつなぐヘルスフード科学 矢澤一良先生(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構)

近年では食品に含まれる栄養素や成分の研究が進み、美容や健康に役立てられると、予防医学の観点からも注目されています。 今回は食の安全と機能(ヘルスフード科学)に詳しく、長年研究をしてきた早稲田大学の矢澤一良教授に機能性成分と予防医学について話を聞きました。

編集長 塩谷信幸(左)と矢澤一良先生(右)
編集長 塩谷信幸(左)と矢澤一良先生(右)

塩谷 矢澤先生がヘルスフード科学に興味を持たれたきっかけは?

矢澤 大学時代に乳酸菌を研究していたのがきっかけです。食の安全と機能をテーマにもっと人々の健康に役立つものができないかと考えていました。1973年に研究員としてヤクルトに入社後は「食による予防医学」に着目しました。それが、私のライフワークとなっています。

塩谷 70年代というと、医療の現場では治療優先で食による予防医学という考え方はほぼありませんでした。食品業界ではどうだったのでしょうか。

矢澤 食品業界でも珍しかったです。でも、生活習慣病が話題になったり、トクホ制度が始まったりして少しずつ食品に含まれる栄養や機能性成分をどう健康に役立てるかを考える企業や研究者は増えました。2015年から機能性表示食品制度がスタートしたこともあって、食による予防医学の考え方が業界内にはずいぶん浸透してきたと感じています。

栄養のプロにもっと活躍の場を

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塩谷 医療の現場では、いまでも病気になった後の治療優先ですが、日本抗加齢医学会に参加する医師らと話していると、病を予防したり、発症を遅らせたりするために食や栄養を見直すべきだという意見も、よく聞かれるようになりました。
しかし、栄養のプロである栄養士や管理栄養士と医師らの研究活動はうまくリンクできていない。これからは、両者をつないで予防医学のあり方をもう一度、考え直す必要があるのではと感じています。

矢澤 同感です。私はヘルスフード科学に携わる中で、多くの栄養士や管理栄養士の方々とも情報交換してきました。食による予防医学を確立するには、まず栄養のプロにもっと活躍してもらわなくてはと思い、2010年に健康・栄養食品メーカーと管理栄養士・栄養士が力を合わせて活動できるよう「日本を健康にする研究会」を立ち上げました。現在、食事による健康増進の一つの手段として、おいしく楽しく食べられる「おやつ」に機能性を付加した「機能性おやつ(OYATSU)」を活用するという新たな価値観を広く社会に提言するためのプロジェクトをメインに活動しています。来春にむけて「OYATSU」を世界言語化しようという取り組みも進めているんですよ。

塩谷 面白いですね。何でもおいしく、楽しく食べられることは抗加齢の観点でも大切です。先生はほかにもヒアルロン酸やクリルオイル、アントシアニンなど各成分の研究会の発足にも携わっていらっしゃいますよね。

矢澤 はい。多くは健康食品に使われている成分の研究会です。医師、栄養士・管理栄養士、食品メーカーなど、業界の垣根を越えて共に議論を進める場をつくり、食による予防医学の発展に少しでもつながって欲しいという思いで立ち上げました。健康食品は、過去に不正を行った一部メーカーの悪いイメージから、「本当にいいものなの?」「安全なの?」と最初から色眼鏡で見られてしまうことが多く、健康食品と聞いただけで拒否反応を示す方々も多いんです。確かなエビデンス(科学的根拠)があっても、その良さがきちんと伝わらないんです。

塩谷 研究会ではどのような活動をしているんですか。

矢澤 学術発表を年1回行うほか、日々、会員向けに各成分に関する新たな知見を共有しています。また、機能性表示食品に論文で報告されていない表示がないか独自にチェックをし、訂正すべき箇所があれば、企業へアドバイスや忠告を行ったりもしています。

塩谷 抗加齢医学に携わる医師の立場でいうと、栄養学と医学をつなぐには、何かもう一工夫必要だと思っていますが、何かいいアイデアは?

矢澤 私も苦心しているところですが、本当の意味でコラボレーションするためには、行政の協力も必要だと思っています。今後は行政も交えた具体的な策を考えていきたいですね。

この記事の監修・執筆医師

矢澤 一良
矢澤 一良(やざわ かずなが)

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所研究院教授

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