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緑に包まれて

「plain living ,high thinking 〜住まいは慎ましく、志は高く〜」と歌ったのはワーズワースだったか。その彼が晩年を過ごした湖水地方のライダル・マウントを訪れ、「ま、なんと贅沢な」とひがんだものである。館や調度品ではない。そのロケーションが素晴らしかったのだ。見晴らしの良い丘に木々に囲まれて。人一人に必要な最低な酸素の量があるように、人一人に必要な緑の量があるのでは、と僕は思う。

自然は究極のアンチエイジング
自然は究極のアンチエイジング

8年間の留学生活をニューヨークの田舎で過ごし、最後は2ヶ月かけてのキャンプ生活でアメリカ横断ののち帰国した僕たちは、どうにも東京という大都会の生活に馴染めなかった。縁あって八ヶ岳の中腹に山小屋を立て、夏、冬の休みと連休は毎年山で過ごすようになったのはそのためである。

山での生活は"自然に耳を傾ける"とモットーとした。初めの頃は辺り一面のお花畑で、天上の楽園の趣があったが、最近では木々が伸びて白樺、ダケカンバの林になったが、それも良い。緑に包まれると、心が休まる。都会のストレスでトゲトゲになった心を、優しく包み込んで癒してくれる。

思えば色とは不思議なものだ。赤は刺激的、青は吸い込まれるような海の神秘、茶色は秋のぬくもり......考えれば色の違いはただ電磁波の波長の違い。それは数値的な差で質的な差はない。ただ人の心が様々な受け止め方をする。そして赤は挑発し、黄色は希望をもたらす。

同じ緑でも、シューベルトの「水車屋の娘」では、恋人との関係の変化に連れて、主人公にとっては好ましい色からおぞましい色に変わっていく。とすると同じ色でも人によって受け止め方は異なって不思議ではないのかも。

話を山小屋に戻そう。ソローの「森の生活」ではないが、山にはなるべく都会の便利さを持ち込まぬようにしてきた。出来るだけ薪ストーブで肉を焼き、コーヒーも豆からグラインドして。不思議なことに山に来ると都会のご馳走は食べたいと思わなくなる。

むしろ、せっかくの山住まいが汚染されるように感じる、と言ったら大げさかな。

自然との繋がりほどアンチエイジングに役立つものはない。現役の間は長期のステイは難しいかもしれませんが、そこは無理してでも年に4、5日、いやできれば1〜2週間、山で命の洗濯を考えようではありませんか。それも無理なら、ハンギング・バスケットで部屋を緑の空間に。

[執筆/編集長 塩谷信幸
 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」

この記事の監修・執筆医師

塩谷 信幸
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)

北里大学名誉教授
アンチエイジング医師団代表
NPO法人 アンチエイジングネットワーク理事長
NPO法人 創傷治癒センター理事長
医療法人社団 ウィメンズヘルスクリニック東京 名誉院長

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